丁度1ヶ月前、ワールドカップ開幕直後にBloombergで配信されていた記事がとても面白かったので、紹介したいと思います。
第三次世界大戦が勃発しないで良かった!
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【コラム】ゴールドマンでは考えつかないW杯投資戦略-M・リン
2010-06-15 05:00:45.92 GMT
【コラムニスト:Matthew Lynn】
6月15日(ブルームバーグ):株価収益率(PER)か純資産価値か、チャートか。どれも購入すべき株式を選ぶ際に使える完ぺきに実用的な尺度だ。しかし、南アフリカ共和国でサッカーのワールドカップ(W杯)という大イベントが始まったのだから、優勝が見込める国を対象に株式を買うなど、これまでと異なる投資方法はどうだろうか。
確かに、金融面の裏付けではなく、サッカーを物差しにポートフォリオを考えるのは投資において科学的なやり方ではない。米ゴールドマン・サックス・グループで出世コースに乗れる方法ではないだろう。
それでも、スポーツにおける勝利や災難が国のムードに影響を与えるのはまず間違いない。個人の消費や投資に波及するかもしれない。午後になりW杯の試合が始まるとブローカーが開店休業状態という要因は別として、ムードが市場に与える影響はどんなものだろう。
それを考えれば、目に見える利益を生むところまではいかなくとも、少なくともほほ笑む位はできるかもしれない。
もしスペインが優勝すれば、通貨ユーロは生き残る。ドイツが勝利すれば、崩壊だろう。ブラジルが再び優勝カップを手にした場合は、BRICs株をロング(買い持ち)にしておかねばなるまい。アルゼンチンが勝ち残れば、鉱山や石油株に大きく賭けよう。
何が起ころうと確実にしておきたいのは、7月11日予定の決勝戦のかなり前にしっかりと投資ポジションを形成しておくことだ。
あなた次第の戦略
そこでブックメーカー(賭け屋)のオッズ(賭け率)に応じて、以下に幾つか検討すべき取引を挙げる。もちろん、最終的には、どの国が優勝すると考えるかあなたの判断次第だ。
その1。スペイン優勝
ユーロを買おう。ギリシャ問題が騒がれたが、欧州単一通貨へのつながりが弱いのはスペインだ。欧州連合(EU)は必要に迫られれば、ギリシャやポルトガルなら救済できるが、スペインはだめだ。国の規模が大き過ぎるからだ。スペインがW杯で初優勝すれば、その陶酔感のあまり、どんな緊縮策をEUが提示しても受け入れるだろう。そして救済の必要はなくなり、ユーロは救われる。だから、今からユーロを買い始めよう。
その2。ブラジル優勝
BRICs資産を買おう。派手なブラジルチームが再び勝利すれば、世界で台頭しつつある国がどこで、落ち目はどこかを誰もが思い起こすだろう。ブラジルとロシアとインド、中国で構成するBRICs諸国でまともなサッカーチームがあるのはブラジルだけだが、同国だけではなく、BRICs全体の株式、債券、通貨が大きく上昇するだろう。
マラドーナ監督
その3.アルゼンチン優勝
石油や鉱山株を買おう。アルゼンチンは素晴らしいチームだ。とりわけ、メッシは世界で最も優れた選手だろう。ただ、代表チーム監督がマラドーナ。コカイン依存歴がある、エキセントリックなかつての天才選手だ。アルゼンチンが勝てば、投資家は教訓を学ぶだろう。監督なんて関係ないと-。大切なのは元を作る原材料だ。これを心に刻んで、鉱山や資源株を積み増そう。
その4。イングランド優勝
FT100指数に投資しよう。英国の状況はあまり芳しくなく、経済はぼろぼろ。赤字の水準もギリシャと同じくらいに高い。国有化された銀行も多い。新政権も安定感がないように見える。それでも、ちょっとした奇跡が起きて、カペッロ監督率いるチームがイタリア式大胆さと統制力を英国の積極性と結び付けることができれば、窮地に陥ったときほど強いことが思い出されるだろう。英国が抱える問題を解決してみせるとの愛国心が大きく沸き立ち、株式指数も大幅上昇するだろう。
優勝悲願
その5。オランダ優勝
インターネット関連株を買おう。オランダは今回のW杯でもこれまで同様、優秀な選手をそろえて勝利する可能性を大きく秘めている。しかし、これまでそれが実際の優勝に結び付いた実績がない。今年こそ皆をあっと言わせて代表チームが優勝カップを掲げることができれば、投資家は教訓を学ぶだろう。熱狂と技術力が現実の利益に結び付くということを-。再び1999年がやってきたかのように、インターネットやハイテク関連株を積み増すことだろう。
その6。ドイツ優勝。
ユーロを売ろう。ドイツの代表チームは少なくとも過去の水準からみると、それほど素晴らしくはない。それでも規律や勤勉さと組織力という伝統的な力で勝ち残るかもしれない。そうなれば、ドイツ人は倹約と勤勉さというドイツ的な価値の素晴らしさを見直し、今以上に自国経済をなぜ地中海沿岸諸国と結び付けてしまったのだろうと考えることだろう。そして、年末前にユーロは崩壊する。だから、今から売っておこう。
第3次世界大戦というシナリオ
ポートフォリオの中の少額を、優勝候補とは言えないチームが決勝戦まで残ったり、優勝してしまう可能性に賭けてみたい人もいるかもしれない。米国が優勝したら、どうなるだろうか。野球やバスケットボール、アメフト関連資産はショート(売り持ち)にしておこう。米国以外の世界中で普及しているスポーツで同国が上達を見せれば、同国独自のスポーツを持つ必要がなくなる。
決勝戦で韓国と北朝鮮が対戦するのはどうだろう。防衛産業関連株を買おう。審判が決勝戦の試合終了を告げる笛を吹くやいなや、第3次世界大戦が始まるかもしれないから。ただ、韓国優勝のオッズは250対1、北朝鮮は400対1だから、このシナリオはまず実現しないだろう。
最後にほぼ確実とみられることだが、W杯が成功に終われば、すべてのアフリカ市場で相場上昇が見られるだろう。投資家はアフリカ諸国が現代の世界的なイベントを完ぺきに開催できる能力に気付き、アフリカ大陸の将来性にますます関心を持ち始めるだろう。
実際、それこそが保証できる結果の一つというものだ。そこから生み出される利益が、応援していたチームが早々と飛行機に乗って自国に戻ってがっくりするあなたの気分を埋め合わせてくれると期待しようではないか。
(マシュー・リン)
(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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原題:World Cup Investment Picks Offer One Sure Win:Matthew Lynn (抜粋) {NXTW NSN L40NON07SXKX<GO>}
--Editors: James Greiff, Laurence Arnold.
確かに、失業率20%のスペイン人も、今日ばかりは現実を忘れて盛り上がっていたでしょうからどんな厳しい政策も受け入れたかもしれませんね。
マシュー・リンは以前、ブラックベリー指数といったようなユニークな論を展開していたのを記憶しています。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=ac9uhoEg6PJ4
とんでも論が得意なコラムニストという感じですが、その着眼点は非常に参考になりますね。
投稿情報: 恒男 | 2010-07-12 22:55
>恒男
例によってお返事大変遅くなりました・・・。
スペインのように不真面目な国家が優勝すること、個人的には喜ばしく思いません。
やはりドイツに勝って欲しかった。
マシュー・リン、面白いよなあ。
真面目な経済記事ばかりをバンカーたちも求めているわけではないということでしょうか。
投稿情報: Shibuya | 2010-08-17 14:53